6年前の2014年御嶽火山噴火はまだ記憶に新しいところです.この噴火は山頂付近の火口から発生した水蒸気爆発で,大量の噴石・火山灰を噴出し,小規模な火砕流も伴っていました.山頂一帯で登山していた多数の登山者が噴石等に襲われ,死者58名,行方不明者5名という,火山災害では極めて悲惨な災害となりました.この噴火を機に,予測しにくい水蒸気噴火に対して多くの議論が巻き起こりました.
以下の報告書には突発的な噴火に備えるシェルターの設置が急務であることとともに,噴火の翌年に実施された火山噴火予知連絡会御嶽山総合観測班地質チームによる大変貴重な調査結果が含まれていますので,是非ご覧いただきたいと思います.
活火山における退避壕等の充実に向けた手引き〈 参考資料 〉 平成27年12月 内閣府
2014年9月27日に発生した御嶽山噴火は忘れるべきではない噴火災害です.
なかなか予兆を捉えることが難しい水蒸気噴火でしたが,何も心配もないと信じて登山していた人々にとっては思いがけないものであったことは間違いない.
実は火山性地震はその前から起こっていて,噴火が発生した12時12分の前,11時41分頃から連続した火山性微動が発生していたのです.僅か11分前のことでした.
当時,地震は発生したがやや収まり,気象庁はレベル1(平常)としていました.火山性微動が連続して発生していれば,レベル1ではなく,少なくても火口周辺の立ち入りを禁止するレベルに切り変えたでしょう.しかし11分はあまりに寸前であったのです.
資料1の情報が出された9月11日以降,結果として気象庁からは何の情報も出されませんでした.地震回数が減っていたからでしょう.
このように,資料1は噴火が始まるかなり前で,地震の回数が急増していた時, 資料2は噴火が起こった少し後に出されたもの,資料3は噴火開始後の午後4時ごろに出されたものです.
資料1で 地震が多発しているのに,「レベル1(平常)」で良かったのでしょうか.少なくても レベル1「平常」 という表現は誰が見ても適切ではなく,この表現自体はその後「レベル1(活火山であることに留意)」と改められました.御嶽山の過去の噴火の経緯を見ていれば,1日50回という火山性地震の数は,少なくても登山者に警戒心を持ってもらう必要があったでしょう.
さらに、通常,火山性微動が連続して起こった場合,噴火が極めて近いと判断されてしかるべきです.実際には10分程度の時間しかありませんでしたが,何らかの対応はできなかったのでしょうか.
様々な教訓を残すことになった噴火でしたが,少なくても次のような事は教訓として学ぶべきものと考えます.
1つ1つの火山は同じではなく,それぞれ固有の性格を持っています(癖のようなもの).個々の火山の特質を理解していて,小さな兆候にも的確に対応できる専門家の養成は,火山観測システムの充実化とともに喫緊の課題です.噴火直後から挙げられた課題ですが,十分には進んでいないようです.
以上に上げた気象庁から発表された噴火についての解説情報資料については抜粋して以下に掲載します.
資料1 御嶽山 火山の状況に関する解説情報 第1号
平成26年9月11日10時20分 気象庁地震火山部
**(本 文)**
<噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)が継続>
1.火山活動の状況
御嶽山では剣ヶ峰山頂付近で火山性地震が増加しています.火山性地震は昨日(10日)昼頃から増加しています.振幅はいずれも小さく,火山性微動は発生していません.噴煙の状況は雲のため不明です.地殻変動には,特段の変化は見られていません.
火山性地震 | 火山性微動 | |
9月9日 | 10回 | 0回 |
10日 | 51回 | 0回 |
11日(10時まで) | 49回 | 0回 |
火山性地震の日回数が50回を超えたのは,2007年1月25日以来です.注)
2.防災上の警戒事項等
御嶽山では,2007年にごく小規模な噴火が発生した79-7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性がありますので,引き続き警戒してください.地震活動が活発になっていることから,火山活動の推移に注意してください.
〈以下略〉
注)同年3月に小規模な噴火.気象庁 > 各種データ・資料 > ・・・>火山活動解説資料(御嶽山)>2007年の資料>年報
資料2 御嶽山 噴火警報(火口周辺)
平成26年9月27日12時36分 気象庁地震火山部
**(見出し)**
<御嶽山に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を発表>
火口から4キロメートル程度の範囲に影響を及ぼす噴火が発生すると予想.<噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引上げ>
**(本文)**
1.火山活動の状況及び予報警報事項
本日(27日)11時53分頃、御嶽山で噴火が発生しました。
山頂火口の状況は視界不良のため不明ですが、中部地方整備局が設置している滝越カメラにより南側斜面を噴煙が流れ下り、3キロメートルを超えるのを観測しました。
今後も居住地域の近くまで影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、山頂火口から4キロメートル程度の範囲では、噴火に伴う大きな噴石の飛散等に警戒してください。
2.対象市町村等
以下の市町村では、火口周辺で入山規制などの警戒をしてください。
長野県:王滝村、木曽町
岐阜県:高山市、下呂市
3.防災上の警戒事項等
火口から4キロメートル程度の範囲では大きな噴石の飛散等に警戒してください。
風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
〈以下略〉
全文は気象庁>火山に関する情報の発表状況>御嶽山で発表した噴火警報・予報>2014年09月>御嶽山 噴火警報(火口周辺)
資料3 御嶽山 火山の状況に関する解説情報 第4号
平成26年9月27日16時08分 気象庁地震火山部
**(本 文)**
<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>
1.火山活動の状況
御嶽山では,本日(27日)11時53分頃に噴火が発生しました.山頂火口の状況は視界不良のため噴煙の高度は不明ですが,中部地方整備局が設置している滝越カメラでは南側斜面を噴煙が流れ下り,3キロメートルを超えるのを観測しています.11時41分頃から連続した火山性微動が発生し,現在も噴火が継続していると推測されます.15時までの火山性地震及び火山性微動の回数(速報値)は以下のとおりです.
火山性地震 | |
9月26日注)11時 | 79回 |
9月26日12時 | 159回 |
9月26日13時 | 31回 |
9月26日14時 | 23回 |
噴火発生後も火山性地震の多い状態が続いています.
2.防災上の警戒事項等
御嶽山では,火口から4km程度の範囲では大きな噴石の飛散等に警戒してください.風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください.爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください.
<以下略>
注)27日の誤り
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