最終更新2021.01.29
目次
2021.01.29 調布市で道路陥没-5 つつじヶ丘の位置図追加
2021.01.26 調布市で道路陥没-4 調布市つつじが丘における陥没、および空洞の発見に関連して
2020.12.01 調布市で道路陥没-3 「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」報告
2020.10.21 調布市で道路陥没-2 陥没地点周辺の地形図
2020.10.19 調布市で道路陥没-1 狛江市ー調布市ー三鷹市牟礼断面図
首都圏地盤解析ネットワーク 代表 遠藤邦彦
調布市つつじが丘における陥没について
10.18 道路の陥没発生
その後も空洞が発見される 11月に続き,1月14日にも確認された.
概要版の地形区分図を掲載していましたが,今回,1m等高線図,RCMapなどを参照して,当該地域の地形区分を見直しました(図1,図2[図の作成には,国土地理院長の承認を得て,同院の基盤地図情報を使用した(承認番号:令元情使,第660号)]).
さらに,2020年12月の“東京外かく環状道路工事現場付近での地表面陥没事象の調査状況のご説明について“(東日本高速道路㈱ 関東支社 東京外環工事事務所)をHP上で見てみました.
様々な調査が進行中で,検討が進んでいることが分かりました.
“調査の状況”や“地盤の特性”などをみると、地層の構成を非常に単純に見ており,その地盤モデルに基づいて調査結果の判断をしているという印象です.すなわち、地盤構成は下位から上総層群の東久留米砂層,武蔵野礫層,沖積層,盛土となっています.私共は長年にわたって該当地域を含む武蔵野台地一帯の地質・地形調査をしてきましたが,この一帯は東京の南部にあっては最も複雑な地域にあたるにもかかわらず,基本データは多くはなく難儀している地域です.
図3は、我々が限られた既存データから作成した地質断面想定図です.つつじヶ丘駅と陥没地点付近を通る北西-南東方向の断面です.図4はそれに基づく陥没地点付近の地盤モデル(未完)です.
礫層は,M2a礫層,M2b礫層,M3礫層の3層のしっかりした礫層が認められ,そのほかに厚さのごく薄いTc礫層(立川礫層)や沖積層の礫層もあるようです.
陥没地点付近の既存データがほとんどないために,正確なことは言えませんが,ここは立川ローム層に覆われた立川面と見るのが有力です.立川面であればこの野川一帯では立川礫層の上に軟弱な泥炭質シルト,粘土層を伴っている可能性があります(首都圏地盤解析ネットワークHP参照).
もう一つ重要なのは,武蔵野礫層(M2a,M2b,M3の3層)の下位に,あまり固結していない泥層や砂層がある点です.私たちは東京層が礫層の下位に存在する可能性があると見ています.東京層と上総層群の境界は,未だこの図には描きこんでいません.
この地域に接する世田谷区側ではデータが多く,上総層群の上位については,東京層基底礫層(世田谷層基底礫層),東京層(世田谷層)の軟弱泥層,武蔵野礫層(M2a,M2b,M3の3層に区分される),立川礫層(Tc-1,Tc-2に細分されるほか、野川泥炭層などもある),沖積層(七号地層,有楽町層下部・上部・最上部)に分けられており,調布市側で突然に単純になることは考えられません.武蔵野面(礫層)の細分や,武蔵野台地の地形区分についての詳細は,以下の文献を参照してください.
なぜ陥没が生じたのか,空洞ができたのかを解明することは,大変重要なことですので,我々この地域の地盤を見てきた専門家が判断しうる,陥没地点付近の地質柱状図等の基本情報を是非開示してほしいと願っています.
<参考>
遠藤邦彦・千葉達朗・杉中佑輔・須貝俊彦・鈴木毅彦・上杉 陽・石綿しげ子・中山俊雄・舟津太郎・大里重人・鈴木正章(2019)武蔵野台地の新たな地形区分. 第四紀研究, 58(6), 353-375.pdfダウンロード
遠藤邦彦(2020)解説:首都東京の地形 ―武蔵野台地の区分(最新版)を紐解く―,2020年4月17日更新,当サイト>地盤なう>地盤(旧:地盤なう2020).
調布市の陥没事故についてその後も複数の空洞が発見されており、調査が実施されています。どれも4-5mの深さで、沖積層に生じた空洞と考えられているようです。入間川に平行な縦断方向に調査が進むようですが、沖積層の性格を捉えるために横断方向の調査も実施してほしいと思います。沖積層と言っても様々な顔つき、性質をもっているので、詳細な調査が必要と思います。
東日本高速道路(NEXCO)>企業情報サイト>プレスリリース>東京外かく環状道路(関越~東名)工事現場付近での地表面陥没について【第11報】>「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」開催概要>
・議事概要
訂正と追加 19日の記事に間違いがありましたので訂正し、図を追加します。
陥没の位置は、立川面上ではなく、入間川(イリマガワ)の低地の縁にあたるところでした。図は1m等高線図です。その南側は武蔵野面の最も新しい時代のもので、中台面(M3面)です。中台面の南西に野川と野川に沿う低地、さらに立川面があります.
陥没した地点は入間川の低地をつくる軟弱な沖積層の上に盛土したところのようです。
19日に掲載した断面図は、この位置より若干西側を通るもので、ピッタリは合いませんが、大づかみにこの地域の地下の状況を見ることができると思います。
[図の作成には,国土地理院長の承認を得て,同院の基盤地図情報を使用した(承認番号:令元情使,第660号)]
昨日【10月18日】調布市内で陥没事故がありました。東つつじヶ丘2丁目の市道に,約5m位の長さ、深さも5m位の穴が突然できたということのようです。その地下で外環道のシールド工事が進行中なので、関係があるかなどなど、詳細はまだ分かりませんが、とりあえず地下の状況が分かるように、調布市狛江と三鷹市牟礼を南北に結んだ断面図を示しておきます。
陥没の位置は立川段丘面の上で、この付近では、地表から表土、立川ローム層、立川段丘礫層が続き、(10/21訂正)その下位は上総層群となっています。上総層群はここではいわゆる硬い泥岩ではなく、よく締まった砂層です。
またごく近くを国分寺崖線が通りますが、この崖線のすぐ下にあたります。イメージとしては調布付近ではこんな風になっていると思います。 とりあえず速報です。
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