2021年3月19日 ファグラダルスフィヤル火山噴火(アイスランド)

更新2021.03.30

 現地時間3月19日夜,アイスランドの首都レイキャビクから50km圏内にあるファグラダルスフィヤル火山が噴火しました.これは東京から高尾山位の距離にあたります.

 噴火当初は立入禁止になりましたが,早くも翌日には解禁され,多くの研究者や観光客が詰めかけました.溶岩間近から撮った画像やドローンを使った動画など,火口付近の噴火の様子を捉えているいろいろな映像が出ています.ライブ映像は特に勉強になり、学校の教材としておすすめです。

 

 アイスランドといえば日本と同じく有数の火山大国ですが,火山の性質には大きな違いがあります.日本列島はプレートが沈み込む「海溝」に沿って位置していますが,アイスランドは2枚のプレートが離れていく「海嶺」と,マントルから直接マグマが湧き上がってくる「ホットスポット」の上にできた島です.

 溶岩の粘性が非常に低くダラダラと流れていく,ハワイのキラウエア火山の溶岩によく似ています.厚い氷河の下に湧き出たマグマは台形の形をした「卓状火山」になります.日本の安山岩質の溶岩とは随分違います.

 しかし氷河が薄いとマグマは大爆発(水蒸気爆発)を起こします.2010年春に噴火したエイヤフィヤトラ氷河噴火はヨーロッパ社会に大きな影響を与えました.水によって急冷されたマグマは細かな火山灰を生成しました.高く立ち上った噴煙はそれをヨーロッパ中に撒き散らし深刻な被害を及ぼしました.呼吸器や目などへの健康被害とともに,エンジントラブルなど航空路へ1ヶ月にわたって混乱をもたらしました.

  

 今回の噴火は氷河のないところで起こったため大爆発にはならず,溶岩もさらさらと流れていきます.そのため被害の範囲が予測しやすく近づくことができるのです.

 

 映像を見ると色んなものが見えてきます.溶岩の粘性が低いので,冷えて固まった表面だけ残して中は流れ去ってしまう「溶岩トンネル」ができています.そこに次に来た溶岩が吸い込まれ,あるいはトンネルの天井を破壊して天井の破片を沢山載せて流下していきます.

 ありがたい事にアイスランドまで行かなくても24時間ライブ映像で観察することができます.いろんな溶岩の様子を探してみてはいかがでしょうか.

 

 今回の噴火は10年前の様は広範囲に及ぶ被害の心配はなさそうですが,現地では火山ガスの放出が心配されています。

 それにしても隠すものが何もなく丸見えなのが驚きですね。

 

参考:

東京大学地震研究所>地震・火山速報>2010年4月 エイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火(アイスランド)

日本地質学会>地質災害調査−活動状況・関連情報>2010年>アイスランド火山噴火と噴煙

(W.K.)